「英語コーチングと英会話レッスン、どっちがいい?」とお考えの方は多いと思います。
この2つを比較する際、「英語コーチングは学習の習慣化」「英会話レッスンは会話練習や会話量の確保」という風に切り分けて考えていらっしゃる方は意外と多いですが、必ずしもそうとは言い切れません。
とはいいつつも、世の中の全ての英語コーチング、英会話レッスンサービスを細かくご紹介する事は現実的ではない為、このページでは、英語コーチング、英会話レッスンそれぞれの「課題」となる部分を取り上げます。
「課題」となる部分をご紹介する事で、その課題が皆様ご自身にとって問題になるのか、スルー出来る部分なのかを判断していただけるので、結果的に皆様ご自身に合った学習環境選択に役立てていただけるのではないかと考えております。
このページの執筆担当者は、大手英語コーチングサービスでのコーチ経験者であり、かつ英会話講師経験者でもありますので、両者の現場の人間としての視点でしっかりと書かせていただいております。
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1. 英語コーチングの課題
ここでは英語コーチングの課題として5つ取り上げます。受講者側の意識の問題に関わる部分もございますが、英語コーチングの分野においてはとても重要視される点でもある為、課題として取り上げております。
1-1. コーチング終了後の自主学習の難しさ
コーチングを受けることで、短期間で集中的に学習できるメリットがありますが、コーチング終了後に自主的に学習を続けることに不安を抱く生徒様が多くいらっしゃいます。
コーチング期間中は、決められたカリキュラムに従って学習し、コーチへの報告義務があるため、程よいプレッシャーがあり、モチベーションを維持しやすいです。しかし、終了後は自分自身で学習内容を計画し、実行しなければならないため、習慣化が難しい、不安だとおっしゃる方が多いです。
特に、仕事が忙しい時期やプライベートの予定が重なると、学習を後回しにしてしまい、できない自分を責めてしまったりして、その結果、学習のリズムが崩れてしまうことが懸念されます。
“文法力や表現力など違う視点でフィードバックを受けられ英語力が向上できたと感じるが、この先もっとレベルが上がるにつれ、どのような教材や学習方法を取り入れていけば良いかわからない。特に自己流でやってしまい、これが正しい方法なのか?不安になり、結果モチベーション低下や目標維持、継続する意味がわからなくなってしまいそう。”
1-2. 高いコストに対してそれぞれの生徒様で効果にバラツキがある
コーチングを提供する企業のホームページでは「TOEICが一気に100点上がった」「英語会議で相手の言っていることが理解でき、スラスラ発言できるようになった」など良いことばかりが並び、自分もそのようになれると思ってしまいがちです。
しかし、英語コーチングは高額であるにもかかわらず、すべての受講者が同じ効果を得られるわけではありません。受講者のコーチング開始時のレベルや、今までの学習歴など、背景が異なるため、同じカリキュラムを受けても成果が均一ではなく、期待したほどの成果を感じられない受講者もいます。
特に、初めて英語学習に取り組む初心者と、ある程度のレベルに達している中級者・上級者では、同じ期間コースを受講しても成長の実感に差が出てしまいます。英語コーチングは高額である為、このような結果のバラツキは、高いコストに見合うかどうかという問題を引き起こしやすいです。
“コーチングを受ける前に色々と体験談を読んで、自分も同じように英語力が上がると期待していたが、想像していたより成果が上がらなかった。”
1-3. 自分に合うコーチングサービスを見つけられない「コーチング迷子」になる可能性
今まで担当した生徒様で、2名ほど(どちらも中級者)他の最大手コーチングサービスを受講されて、あまり満足できず辞めて、私のところで受講された方がいらっしゃいました。
最大手コーチングサービスで満足できなかった理由は「一日3時間の学習はきつかった」「ただ課題をこなすことが目標になってしまった」「学習時間のわりに伸びは感じられなかった」「フィードバックが思ったほどもらえなかった」といった内容でした。
英語コーチングサービスは比較的新しいサービスである為、「人生で初めて英語コーチングを受講する」という方はとても多いです。そのため、サービス利用を開始してみて初めて感じる事、知る事があり、「間違った英語コーチングを選んでしまった」という事態が発生する事があります。
サービス利用を開始してからでしか感じられない事、知れない事については、事前にはどうしようもない部分もありますが、最低限、コーチングを受ける目的(スピーキング力を伸ばしたいのか?TOEICやTOEFLなどの点数を アップさせたいのか?)を明確にし、自分がどの程度英語学習に時間を割けられるのかをしっかりと考えておき、コーチング開始後はコーチとしっかり目標設定しておく事が大切です(英語コーチングでは見切り発車する方が実際には多いです)。
それでも様々な要素により、コーチング迷子になる方は多くいらっしゃいます。
1-4. コーチとの相性問題
コーチングの効果は、コーチと受講者との相性にも大きく依存します。しかし、この相性問題は事前にはわからないことが多く、実際に受講してみて初めて問題に気づくことも少なくありません。「フィードバックが厳しすぎる」「サポートが不足している」「コミュニケーションスタイルが合わない」といった理由で、コーチとの関係がストレス要因になることもあります。
特に、プレッシャーに弱い受講者に対しては、課題提出が滞った際に、コーチから催促があったり、厳しめのフィードバックを受けるなどした時、逆効果となる場合があり、学習意欲が低下してしまうことがあります。
さらに、コーチングの受講期間が短い場合、相性の問題に気づいても、コーチを変更する余裕がないまま終わってしまうケースもあります。
“通話コーチングのスピーキング練習で間違えを指摘されて、やる気が低下してしまった。もっと優しくヒントを出しながらフィードバックしてくれるコーチがいい”
“課題へのフィードバックは丁寧でありがたいが、通話コーチングでの会話のテンポが合わない”
“課題提出が遅れていて、催促の連絡が頻繁にありプレッシャーになっている”
1-5. 受動的な姿勢が学習成果を妨げる
コーチングは、あくまで受講者が主体的に学習に取り組むことを前提としています。しかし、一部の受講者は、コーチからの指示をただ待ってしまう傾向があり、自分で調べたり考えたりする意欲が不足していることがあります。「答えをすぐに教えてほしい」といった受け身の姿勢では、コーチングの本来の効果を十分に得られない可能性があります。
特に、フィードバックを受けた後にその内容を自分で復習しない場合、同じ間違いを繰り返してしまい、成長が滞ることがあります。
コーチングはサポートツールであり、最終的な成果は受講者の自主的な取り組みにかかっていることを自覚していないと、期待した効果が十分得られなくなります。
以下では、私が実際に担当した方々の中で、この受講姿勢が影響して結果が大きく異なった2名についてご紹介します。
■3ヶ月受講後、TOEICで約200点アップ(580点から775点)された方
こちらの方は、フィードバックをいつも積極的に受け入れ、ライティング課題では毎回必ず文章を書き直して再提出されていました。また、テキストで理解できない文法項目、単語の意味の違いなど分からない部分があれば、まずは自分で調べてみて、調べても理解できない部分はコーチ(私)に聞くという姿勢で取り組まれていました。
■あまり伸びが感じられなかった方
ライティング課題にフィードバックをしても、書き直しせずそのままにしており、同じ間違えを繰り返されていました。
似た単語の意味の違い、文法テキストの分からないところをご自分で調べる事はされず、コーチに質問され、コーチ側から回答するものの、その後も同じ内容の質問をされ、身についていないという事が多くありました。(中級者)
1-6. 英語コーチングで提供される英会話レッスンで起こりうる問題
英語コーチングでは、担当コーチとは別に、英会話講師による英会話レッスンを受けられる形も存在します。これは英会話スクールでネイティブ講師とは別に日本人アドバイザーがいるという形と似ています。
アドバイスをくれるコーチ、アドバイザーがいて、さらに会話を教えてくれる英会話講師もいて良さそうと思ってしまいそうですが、実はここにも落とし穴が存在します。
英会話レッスン(特に大人向け)については、その方の英語力、目標とするレベル感、好まれる会話の温度感やスタイル、得手不得手、くせ、特性は、本当に様々で、一括りに「初級レベルのシャイなビジネスパーソン向けビジネス英会話」という形で分類できません。
英会話レッスンの現場で講師はこういった様々なファクターを感じ取り、把握し、言語化できない部分までを考慮して現場で対応していきます。こういった様々な要素を現場にいないコーチや日本人アドバイザーが100%理解できるかというと、それは難しいと思いますし、その結果、コーチ、日本人アドバイザーによるアドバイス、サポートはどうしても効果が限定的になる事があります。
2. 英会話レッスンの課題
英会話レッスンの場合、様々な形式がある為、一括りに「ここが共通の課題」と絞り出す事はできません。そのため、ここでは、英会話レッスンのいくつかの形をピックアップし、それぞれについての課題を取り上げました。
2-1. (講師が頻繁に変わる形式では)レッスンの一貫性が欠如する
オンライン英会話レッスンでは、毎回講師一覧からその時に空いている講師をランダムに予約して受講する形が一般的ですので、同じ講師での継続受講が保証されているわけではありません。この形式は、様々な先生のレッスンを受けられるというメリットがありますが、一貫性のある学習が難しいというデメリットも存在します。
特に、初心者や中級者の場合、自己紹介や基本的な会話ばかりが繰り返され、新しい表現や単語の習得が遅れることがあります。
話しやすい、お気に入りの講師を見つけるなどし、毎回固定の講師とレッスンをしようとしても、良い講師は人気があり、その講師のレッスンはなかなか予約が取れないという事はよく起こります。そのため、毎回、又は数回ごとに講師が変わる為、各レッスンの進行状況や生徒様の進歩状況を一貫して把握する事が難しく、効果的なフィードバック、サポートが得られにくくなります。
※講師間で生徒様情報を共有している所もありますが、多くがテキストベースでの簡単な情報共有であり、講師が変わるという部分からくる影響はやはり大きいです。
“(オンライン英会話では)話す度胸はついたが、伸びた実感はなかった“
“(オンライン英会話では)毎回同じような内容を話したり、話せる範囲での会話になってしまい、語彙力や表現力が身に付かなかった”
2-2. グループレッスンの場合、発言機会が制約される
グループレッスンでは、スピーキングの練習時間は限られており、自分の意見を発言する機会が少なくなる傾向があります。
特に、発言力が高い生徒様が周りに多い場合、自分の発信力が足りないと発言の機会がさらに少なくなり、結果としてレッスン内での練習不足に繋がってしまいます。
また、講師が全ての生徒様の発言を細かくチェックすることが難しく、誤った表現や発音を修正しないまま覚えてしまうリスクも存在します。
他の生徒様とのディスカッションや意見交換から学びを得られると考える方もいらっしゃいますが、そもそも自分と同じ英語レベルの人が話す英語から学べることは限られており、また、自分と同じ英語レベルの人が話す間違った英語の使い方や発音を間違ったまま自分自身も覚えてしまうという問題もグループレッスンでは起こりえます。
“大学時代、週1回1時間の対面式英会話スクールに通っていた。クラスは大体5〜8人程度。クラスメイトとディスカッションする時間もあったが、トータルで自分の話す時間は5〜10分程度だった。今振り返ってみると、クラスの前で話すことに自信が持てず、積極的になれなかったことと、先生の話す時間、他の生徒様の発言を聞く方が多くなっていて、発話の練習が全く足りていなかったと感じる。2年通ったが「スピーキング力がついた」とは感じずにやめてしまった。(初中級クラス)”
2-3. 初心者にとってのスピーキング練習不足が起こる可能性
マンツーマンレッスン、グループレッスンともに、特に英会話をはじめたての初心者の生徒様は、限られた単語や表現しか使えないため、講師が多くの時間を話すレッスンになってしまっている事は多いです。
これは、学習の進行を助けはしますが、その一方で生徒様自身が英語を話す時間が極端に少なくなり、スピーキングスキルの向上が遅れる要因にもなります。生徒様が話せる内容が限られている場合、会話が単調になりがちで、新しい表現や文法の学習が停滞する可能性も高まります。
レッスンを提供する側がしっかりとその辺りを意識してカリキュラムを作成したり、学習者側も新しい表現や文法を間違いを恐れず使ってみたり、レッスン後にしっかり復習するなどの積極的な姿勢が必要となります。
2-4. レッスン内だけの学習にとどまり、自宅学習を怠る可能性
多くの生徒様が英会話レッスンを受講するだけで、その他の時間での学習を怠りがちです。このような状況では、レッスン内で学んだ内容を十分に消化できず、効果的な学習が進まないことが多いです。
英会話の習得には、レッスン前の予習や復習が不可欠ですが、これを怠る生徒様が多いのが現実です。企業の広告ではレッスン以外の学習も重要とは明記されていないことが多く、学習者に『レッスンの受講だけで英語力が伸びる』という印象を与えるのもその原因です。
特に、忙しい社会人の生徒様はレッスン以外の時間での学習時間を確保することが難しく、その結果、英語力の向上が遅れることがあります。
レッスンを提供する側がしっかりとその辺りを意識してカリキュラムを作成したり、学習者側も予習、復習の重要性をしっかりと意識する姿勢が必要となります。
2-5. 教材に依存しすぎると学習者のニーズに合ったレッスンが提供できない
英会話レッスンでは、教材に従って進められることが多いですが、これは生徒様によっては効果的でないことがあります。生徒様個々の学習ニーズや興味に応じた柔軟なレッスンが行われない場合、学習内容が自分に合っていないと感じることがあり、その結果、モチベーションが低下する可能性があります。
教材に沿ったレッスンはある意味マニュアル的な要素がある為、教える側からすると「楽」で効率的ですが、生徒様自身が現時点で必要としているスキルを磨く機会を失うことがあるため、結果として学習成果が上がらないことがあります。
2-6. (外国人講師の場合)文化的・言語的背景の違いによりコミュニケーションが難しくなる
英会話レッスンでは、外国人講師の場合、異なる文化的背景や習慣に対する理解が必要となることがあります。言語自体の理解力のみならず、講師と生徒様の間では文化的な違いがコミュニケーションに影響を与える場合もあります。
講師、生徒様それぞれがお互いの国の文化や習慣を理解している場合は、それほど影響はないこともありますが、そうでない場合、例えば、ジョークや慣用表現、社会的な文脈が生徒様にとっては理解しにくいと感じることが出てきます。それにより会話が進まず、モチベーションが下がったり、学習の効果が限定されることがあります。
いかがでしょうか?
英語コーチング、英会話レッスンの良い所は世の中に十分知れ渡っていますので、逆に、英語コーチング、英会話レッスン、それぞれの「課題」を知るというアプローチにより、皆様ご自身の学習環境選択において何らかのお手伝いをさせていただけたのであれば、幸いです。
“コーチング期間は日々カリキュラムに沿って学習ができ、進歩状況や伸びた点などコーチがフィードバックしてくれたが、それが一気になくなるとなると、独学でこの先やっていけるか不安。かといってコーチングは高額なため、継続できるまでの経済的余裕はない。”